かしの木山生物倶楽部 ツミの営巣2008
ツミの営巣2008

3月、この年、初めて見かけたのは成熟した雄でした。
しかし、この雄は、居つく事が無くすぐにどこかへ移動してしまいました。





翌月の4月、ツミの声がよく聞かれるようになりました。
居付いたのは若い雌のツミでした。
色から判断して、まだ1年目の若鳥です。





間も無く、無き交わす声が聞かれるようになり、現れたのは、これもまた若い雄でした。





やはり1年目の若鳥のようですが、
それでも目の虹彩は一人前の雄の証である赤になっています。







6月16日

始めのうちは南の雑木林の東側でよく見られましたが、6月になってからは西斜面に移動しました。
ここで営巣木を変えたようです。





雌も西斜面に現れるようになります。
巣の産座を作るために雌は尻近くの羽毛を自分で抜きますが、それが見られません。
抱卵はまだしていないのでしょう。





雄は雌の為に獲物を運びます。
この時の獲物は小鳥のようでした。 たぶんスズメでしょう。






7月12日

巣を発見しました。
松等の針葉樹ではなく、広葉樹のミズキに作っていました。
これにちなみ雌の名前を「ミズキ」としました。
一度場所変えをしているせいか、とても小さい巣に思えます。





ツミの営巣記録をする為に、特別に機材を組みました。
デジスコとビデスコのダブルスコープです。
これで写真による記録とビデオによる記録を同時に撮ることが出来ます。
総重量10.2Kgは肩に堪えますが。





抱卵をしています。






7月19日

抱卵中。
まだ青いサワラの葉が追加されています。
6月16日にはまだ抱卵をしていませんでした。
産卵から孵化までおよそ30日かかります。
20日頃の産卵だったとすると次回の観察日には雛が孵っている可能性があります。






7月22日

雛の姿は確認できませんが孵化したもよう。
「ミズキ」が給餌をしています。
給餌をするポイントが一点であることから、まだ雛は1羽と推測されます。






7月26日

雄も時々覗きに来ます。
仕事に出掛ける前に我が子の寝顔を覗いていく父親といったところでしょうか。





この日、雄が捕らえた獲物は小鳥ではありません。





拡大してみるとそれはネズミでした。
ツミがネズミを捕らえる例は少し珍しいのではないでしょうか。
雄の名前をネズミ捕りの「チュウタロウ」としました。






7月27日

写真では写せませんでしたが、ビデオではもう1羽の雛が映っていました。
孵化した雛は2羽です。





「ミズキ」の媚斑に注目してみました。
これは抱卵中のもの。





こちらは4月のもの。
羽毛の膨らみ方や角度で微妙に違って見えますが、ブロックのパターンとして眺めると同一であることがわかります。





たびたびカラスの襲撃があり、そのたびにツミの夫婦はスクランブル発進をかけ追い払います。
木にとまっているカラスには体当たりをしたり、爪を立てたりしているようです。
空中戦ではスピードでカラスを圧倒し、6羽のカラスも蹴散らします。
それでも連日の戦いで羽は痛んでいるようですね。





カラスを蹴散らした後、雛はちゃんと餌をもらえました。






8月2日

雛の目は開いたばかりなのか、眠そうな顔に見えます。





雛が1羽しか確認できません。
何かあったのかも知れません。






8月3日

この日も給餌するポイントは一点のみでした。
2羽目の雛の姿は確認できません。
残念ながらあとから生まれた雛は死んでしまったようです。
暑さが原因か、カラスの襲撃があったかはわかりませんが。





1羽だけになってしまった雛を「ミズキ」はとてもだいじにしているようでした。





茶色い羽も生えてきて、残された雛は無事に成長しています。





無事に巣立ってくれることを願うばかりです。






8月9日

雛の成長は加速されるのか、先週より急激に大きくなっています。





茶色い羽もだいぶ生え、翼をのばしたり、





羽ばたく真似事も始めました。





もう、すぐにでも枝渡りを始めそうです。






8月10日

昨日とあまり変化は無いだろうと思いつつかしのき山へ向かいました。
雛が見えません。
巣に伏せていると見えないので、そうなのかもしれません。
でも枝渡りを始めたのかも知れませんので、周りの枝を双眼鏡でくまなく探しました。
しかし、見つかりません。
急に胸騒ぎがして、営巣木に初めて近付き、地面を探しました。
そして見つけたもの。





昨日はあんなに元気だったのに何があったというのでしょうか。
死骸を調べると、胴には目立った傷はありません。
それに比べて頭部の損傷はひどいものでした。
アップの写真の掲載は控えますが、目はえぐられ鞏膜輪(きょうまくりん)といわれる目の薄い骨の輪が露出しています。
通称鼻こぶと言われる「ろう膜」は欠損しています。
鼻、顎、目の周りは骨が露出しています。
これは目を中心に執拗に突かれたものと推測します。
犯人はカラスでしょう。





少し離れたところで「キーキーキー」と力無く鳴くツミの声が聞こえました。
その声が雛を呼ぶ声なのか、悲しみの声なのかはわかりませんが、
いつも聞こえていた鳴き交わしや、縄張り宣言、威嚇の声とはまったく違うものでした。
覗き込むと飛び去る後姿が見えました。

来年またここで・・・とも思いましたが、ここは夏の間カラスが涼む為に集まる場所です。
営巣には向かない所だと思います。
どうか来年はカラスに邪魔されない所で、無事に雛を巣立たせて欲しい。
そんな気持ちで飛び去る後姿を眺めていました。

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